会社員であれば、社内で四半期や年度ごとに共有される決算報告を見ることも多いと思います。
この決算報告、数字がたくさん並んでいて、特に入社してからまだ日が浅いといった場合に、これをどう見るのかわからないものです。
とにかく、
- 数字が多くてどれがポイントなのかがわからない
- そもそも用語がよくわからない
- 数字から何をどう読み取ればよいか
と考える方がほとんどではないでしょうか?
会計の勉強をきちんとやればもちろんよいのですが、そこまでせずとも、重要なポイントを押さえるにはどういう知識をインプットしたらいいでしょうか?
大村大次郎著、「決算書は3項目だけ読めばいい」を参考にしてみましょう。
注目するポイントを「売上」「利益」「現金・預金」の3項目に絞って読んでみる。これが本書の主テーマです。
税務署調査官が大量の決算書をチェックするための実践的ノウハウ
本書の著者は、国税局で主に法人税担当調査官として10年間勤務した経歴があります。
国税局の調査官が決算書を見る時の視点、それは「脱税の発見」。
いかに追徴税をたくさんとるか、これが決算書をチェックする動機になっているわけです。
この視点で、調査官たちは「日本でもっとも決算書を見ている人種(本書p.18)」であり、著者はその一人であったということです。
大量の決算書をチェックし、不正な点を見ぬく。彼らはどのような点をポイントとしてチェックしているのでしょうか?
この視点自体は普通の会社員の人たちとは異なるのですが、そのノウハウは興味深いです。
そして、そのノウハウが、冒頭で書いた「売上」「利益」「現金・預金」というわけです。
- 会計の知識を本格的に知るには多くのことを学ばなければならないが、その時間もない。
- 知りたいのは自分が勤めている会社や(投資などで)興味がある会社の状況だ。
- 結局、儲かっているのか、あぶないのか。
見る視点は違っているかもしれませんが、知りたいことはそう大きくは離れていないでしょう。
プロの手法を参考にしてみましょう。
チェックポイントに注目して、複数年度の決算表を見比べて読み解く。
- 決算書は単年度で見てもわからない。数年分の流れで見るということが大事。
この点は非常に興味深かったです。なるほどと思われる方も多いと思います。
単年度だけみても、基準がないのでそれがどれくらいのレベルに位置するのかがわかりません。
同じ年度で同業他社と見比べても、やはりわからないのです。企業がもつ背景が異なるので単純な比較ができないからです。
ではどうするか。
それは同じ企業の決算書を複数年分並べてみるということです。
チェックポイントはやはり、上に書いた「売上」「利益」「現金・預金」。まずはここから眺めることです。
これだけでも多くのことが見えてくる、と筆者は述べています。
さらに5つの勘定項目を加えるると詳細な分析を行える
ただし、本書ではもう一歩進めて、さらに5つの勘定項目を合わせて決算書を読めば、決算書の本質についてもう少し詳しくできるとしています。(本書p.90)
その5つについては、是非本書を手にとって読んでみてください。本書の第3章です。
「決算書の嘘を見抜く」という章題で、これも普通の会社員が本書を読む目的には合わないように見えますが、決算書を読み会社の状況を理解しようとする目的は同じ。
プロが読み解くプロセスを追体験してみましょう。
まとめ
会計についての知識がまったくない人にとっても、まずこの本で書かれている勘定項目を切り口にし、入門書として読めば、いままでさっぱりわからなかった決算書にどういった情報がかかれているかが見えてくると思います。
「会計用語の基礎知識」というコラムも盛り込まれていて、これがまた初心者にもわかりやすい書かれている点がいいですね。
以下、まとめです。
- 注目するポイントを「売上」「利益」「現金・預金」の3項目
- 決算書は単年度で見てもわからない。数年分の流れで見るということが大事。
- さらに5つの勘定項目を加えるると詳細な分析を行える