岡田陽介著、「AIをビジネスに実装する方法」を読みます。
本書の特長の1つは、企業が実務としてAIを導入し、どのような効果を上げたかを実例として紹介されているところです。
「AI」「機械学習」「ディープラーニング」よく聞く言葉の違い
「AI」、「機械学習」、「ディープラーニング」という言葉はよく聞くけど、違いはなんだろう?
これらの言葉の関係を整理するために、まず本書のP.29の分類表を見ておきましょう。
2012年にコンピュータービジョン(CV)分野で、AIの精度が劇的に上がったことが発表されましたが、このときに用いられた手法が「ディープラーニング(Deep Learning、深層学習)」でした。
ディープラーニングが旧来の機械学習と違う大きな特長の1つが、「特徴量をコンピューターが抽出する」ということです。
例えば画像判定の分野で、動物が写っている写真を100枚見せて、このなかから犬が写っている写真をコンピューターに選ばせるとしましょう。
旧来の機械学習では、犬の特徴、つまり耳の形や顔、胴体の形、色、しっぽの長さが他の動物たちとはどのように違うかということを人間がコンピュータに情報として与え、「これが犬だ」と教えてやることが必要だったわけです。
ディープラーニングという手法は、この特徴をコンピューター自身が探りだす、というところが大きな特長になっているのです。
どうやって行うのか?
この点に関しては技術的には難しい話になりますし、本書を読んだだけでは理解することは難しいですので、別の入門書にあたる必要があります。
ですが、1950年代にAIが概念として生まれて以降、何度かブームになったり冬の時代を迎えたりしながら、2012年のこの発表でどういう変化が起こったかについてのイメージは掴めると思います。
AI 企業が導入した結果
本書を読もうとされる方で、一番興味をもたれるのは第5章でしょう。
「AIを導入した企業のビフォー&アフター」ということで,4社の事例が紹介されています。
なぜAIを導入する判断をしたのか、どのような課題を解決したのか。現実の問題においてデータをどう活用するのか。
約30ページほどではありますが、大変興味深く読みました。
導入のプロセス
本書では、著者が自身の経験に基づいて蓄積したノウハウを紹介し、日本の企業がまだまだAIの「実装フェーズ」に至っていないことを指摘しています。(2018年時点)
テーマはあくまで企業におけるAIの導入、運用、効果など、実務的な話になります。
AI導入のための5つのプロセス(p.98)など、AIを導入することを検討しているが、どのように進めたらよいか感覚がつかめない、という場合に参考になると思います。
システムの導入1つとってもいくつかの方があります。クラウドサービスにおけるPaasやSaasといった概念が、このAIの導入においては具体的にどのような形態になるのか。5つのプロセスをさらに細かく分けるとどのようなプロセスがあるのか。
導入コストに見合う効果を得るために知っておくべきことを知るための、よい入門書だと思います。