本書はライフネット生命創業者、出口治明著の書評集です。
素人には信じられない数の本を読みこなしてきた人々が世の中にはたくさんおれらますが、著者もまたその一人です。
そして、書評自体がどれもとてもおもしろい。紹介されたどの本も読みたくなってきます。
著者は幼いころから本が好きで、学生時代の読書量も半端ではない。就職してからは読書量が少々減ったとのことですが、これだけ大量の本を読みこなし、読みごたえのある書評を書かれるというのは、私などにとってはただただ羨望の的という思いしかありません。
私など、一冊読んでもしばらくしたらほとんど忘れてしまう。せっかく読んだ本が自分の血肉に全くなっていないんだなと痛感します。
出口治明著、「リーダーは歴史観をみがけ」。さっそく読んでみましょう。
仕事とはまったく違う分野の本を読むこと
イノベーションを起こす斬新なアイデアを求めるなら、専門分野以外に関心を持つことが大切だ、それには仕事に関係のない本を読むのが手っ取り早い、とー (本書p.15)
会社員になると、つい自分の仕事に関連する本ばかりを選択してしまいがちになります。即効性ばかりを重視して求めてしまうんですね。
この言葉、重要な戒めの言葉として受け取りました。
専門分野から外れたところにこそ、斬新なアイデアが埋まっている可能性がある。せっかく読書をするのだから、遠い領域でも自分の興味があってワクワクするような読書をするのがよい。
長い間忘れていたような気がしました。自分が興味があったはずのこと、今興味があることについて、自分の仕事の分野にこだわらずに読めばよいのです。
リーダーが持つべき歴史観
本書に収録されている書評は、著者が読売新聞の読書委員として書いたものを中心に取り上げられていて、多くは歴史に関連したものになっています。
しかし、この書評を読んで一目でわかるその圧倒的な知識の量。そして読んだ本の内容だけでなく、他の文献とのつながり、情報の緻密な分析、読む人を惹きつける筆力、どれをとってもすばらしい限りです。
タイトルにある「リーダーは歴史観をみがけ」は、「人間には将来を見通す神通力は備わっていない、歴史を学び過去を教材にする。(本書p.18)」のあたり以降の記述から抽出されたものと思います。
歴史を学ぶことの重要性はわかったが、どのような本を読めばよいか迷っているという向きには、本書に登場する書物が手がかりになると思います。
結局はじっくり書物を読むしかない
本書のようなすばらしい書評集を読むたびに思うのは、アイデアを求めるにも、リーダーシップを鍛えるにも、教養を身につけるにも、歴史観を磨くにも、結局はじっくり書物を読むしかないということです。
書物をたくさん読み、その間のつながりを見出しながら自分自身の知の体系を作り上げていく。
なかなかできることではありませんが、その努力を続けていきたいものです。